ジェネシス(創世記)

「わたの原 こぎ出でて見れば 久方の 雲いにまごう 沖つ白波」

大海原に船出し遠方を見ると、空の白い雲と見間違える白波が立っている。法性寺入道。

 二五二0年。全員、冷凍睡眠装置の中で眠りについていた。私はゆっくりとまぶたを開いた。私だけが目が覚めた。

モニター画面には、火星の大地に海原が広がっている。青い星に生まれ変わっている。第二の地球、私たちが住む新しい故郷、「神の国」だ。

 警報機が鳴っている。異常が発生した場合、私だけが優先して起きるように設定していた。

他の宇宙船や宇宙ステーションの乗員たちは、一人も起床していない。もしかすると、「主」は私だけを起こしたのかもしれない。

 方舟は、「衛星フォボス」の影に、隠れるようにして火星の周囲を回っている。操縦室に行くと、被爆計の針が大きく振れている。異常な反応を示していた。

放射線測定器で計測すると、私たちは数百倍の放射線を浴びている。放射線は容赦無く、方舟の中を貫通している。

 全員を眠りから覚ませば、ガン細胞が増殖を始めて一年以内に死亡する。私の頭部にも、違和感を覚える。「脳腫瘍」かもしれない。他の宇宙船の乗員たちも、被爆しているはずだ。