ジェネシス(創世記)

まだ火星の居住地には、着陸できない。最低でも、四カ月間は待たされた。健康診断やウイルスチェックを実施した。身体もその環境に慣れるように、ジムで鍛えた。

遅れてソーラーセールで移動している宇宙ステーション、一0機が到着した。残りの七機と付添の宇宙船五機は、まだ一カ月はかかるようだ。

 火星の二五ある地下居住区では、現在六00人いる。定員は一五00人、九00人しか受け入れられない。

最初に大統領以下、五00人の政治家、科学者とその家族たちが火星に降(お)り立(た)った。宇宙に取り残された私たちは、火星の周りを回るしかない。途方に暮れた。

 新たな事件が起きた。短期間で、居住施設で一000名以上が死亡した。居住区の各所でウイルスが発生した。火星の極冠で眠っていた原始ウイルスが、活発化したのだ。

ワクチンは、すぐに生産できるものではない。三カ月以上は研究を要する。狭い空間施設の中では、感染はすぐに広まった。他の施設の人の移動や家畜類の移動は、制限された。

 ウイルスの宿主(寄生される生物)を、特定できない。感染源は、人間がたれ流す「汚水」だった。廃棄物処理装置が、早くも故障してしまいリサイクル機能が不能となっていた。