友人は夫婦で近いうちに、ドイツを旅行したいと言い出した。元軍曹との再会を、楽しみにしている。

ところが、その友人の背後にその元軍曹が立っているではないか。元軍曹は奥さんを連れて、このホテルに宿泊していたのだ。

 外科医が、この退職記念日のために元軍曹を呼び寄せたのだ。友人と元軍曹は、感激のあまり抱き締め合い、涙を流して再会を喜ぶのであった。昔の思い出に、花が咲いた。

 みんなでテーブルを囲んだ。最初で、最後の晩餐になるかもしれない。今夜ほど、久しぶりに美味しい日本料理を堪能できたことはなかった。激動の時代を生き抜いたこと、今生きていることに感謝し、乾杯しよう。

私が生まれた時に生産された、北海道の完熟ワインを注文した。バースディーワインだ。これは、私のおごりだ。みんなで、飲んで下さい。

 私には、政治・経済など、社会や世界に向けて偉業を残せるものは何一つない。戦争を終結させるだけの力量もない。

私にできることは、自己流の「聖書」を書き上げるだけだ。友人の「聖書」に、負けないような本を書き上げよう。ペンに力が入るぞ。

 私は、この四人の友情だけは大切にしたい。国籍も民族も違う人。宗教観念の違う人。生い立ちも環境も全く違う人。

過去に何度も憎しみあった人たちだ。日本人である外科医が仲介(ちゅうかい)してくれなければ、四人は知り合うことはなかった。

 遠い東の国、日本。「主」とは全く関係のない、異国の民族。日本こそ中立的な国だ。将来三つの宗教、世界各国の和平をとりもってくれる国となることを祈りたい。そう信じたい。主よ、四人の友情を祝福して下さい。


 今、巨大プロジェクトが発動した。一度は、「主」に見捨てられたはずの三つの宗派が一つになった。

いやそれ以上の人たちが、宗教や国籍も民族意識を捨てて、日本人の呼びかけに応じて、一致団結した。それは、「神の国」へと旅立つ計画であった。

●「第十一章 神の国へ」と続く。