ジェネシス(創世記)

エフがそう思った途端、異変が起きた。空には黒雲が立ち込め、雷鳴がとどろいた。エフの顔が青ざめた。雷が、祭壇に落雷した。

撒いておいた石油に引火し、炎上してしまった。マネは、炎に包まれて息絶えてしまうのであった。エフの不届きな行為は、神官たちが見ていなくとも、偉大なる「主」の目を欺くことはできなかったようだ。

「三つのものが強く女を動かす。利害と快楽と虚栄心である(ディドロ)」 

 本当の統治者は、マネであってエフではない。マネが勝利に導いたのだ。しかし、戦に勝者などいない、敗者もいない。必ずどこかに、涙を流す者がいる。パレス人にも、愛する家族がいる。遺族たちもまた、涙で暮れているはずだ。

 憎しみが憎しみを生む。宗教と領土争いが発端ではあるが、今では互いの意地と憎しみを満たすために争っているようなものだ。

どこかで、この思いを断ち切らなければならない。憎しみに、打ち勝つことができるであろうか。家族を戒めた者を、愛することができるであろうか。私は、いつかお互いに分かりあえる時がくることを、願うだけだ。

 遠い未来。人類が「神の国」へ旅立つ時、憎しみの連鎖を超えて団結する日が訪れるであろうと、モンは語っていた。そんな夢を見たと、私に言っていた。

「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい(マタイによる福音書)」

「戦争が戦争を養う(シラー)」

「暴力で勝った者は、半分敵に勝っただけだ(ミルトン)」