兄と春乃はパクパクと口を開きやっとのことで言った。


「一花……」
「まさか、あなたが……?」


 そう呟いた――直後、春乃の顔から血の気が引いていった。「だから最近……」


 午前中で講習は終わりのはずなのに一花はなかなか帰ってこなかった。それも、いつも決まって木曜日。
 その日だけやけに帰りが遅かった。
 てっきり友達と遊びに行ってるのだとばかり思っていた。



 だけど、
 ――……そうじゃなかったのね。



「……ごめん母さん。私、ずっと叔父さんの家にいた。咲希と適当にお昼食べてそれから毎週通ってたの」


 
 苦しそうに眉根を寄せながら姪は言った。
 兄と春乃は考えもしなかった娘が隠れてとっていた行動に愕然としていた。
 俯く姪のつむじが揺れている。震えているのだ。
 友達といると騙してこっそり会いに来ていたことが申し訳ないのだろう。
 そしてそれ以上に、


 叔父であるわたしに叔父として以上の感情を抱いてしまったこと、そのことが一番に姪の心を苦しめている……。




 
 ――好きになっていけないという法律はない。
 しかし、
 結ばれてよい関係ではない。

 世間体もある。――だがそれだけではない。



 
 親の感情としては、けっして許せることではない。