泣いたら、泣くから。


「えっ」
「えっ!」


 美里と一花の声が重なった。


 順也と美里がいなくなれば必然的に二人きりになってしまう。
 と、その状況を想像してかっと顔が熱くなった。同時に、心臓が胸を突き破るほどの勢いで跳ね回りだす。


 ど、どうしよう……!


「葉多がママどこってぐずるんだよ。だから帰るぞ」
「う、うん。わかった」


 去り際、美里はさっと一花に近寄って、「あとで報告しなさいよ」そう耳打ちして引きずられていった。


 とうとう、本当に二人きりになってしまった。


 波音と風音が止まることなく二人の間を流れていく。


 こんなとき、どう話しはじめれば一番いいのだろうか。
 なにせ一年ぶりの再会である。
 その間、一度として叔父に会うことがなかったのだ。どうすれば"それらしく"なるだろう。

 と、悶々と切り出し方を考えあぐねていると、


「―――春乃さんに聞いたんだ」


 叔父が先に口を開いた。


 はじめは渋ってる様子だったけど、なんとか教えてもらったらここだって。


「お、お父さんは……?」
「内緒で来た。でももう、春乃さんから伝わってるかもしれない。―――けど、あとからちゃんと言うから心配しなくていい」
「ちゃんとって……?」


 訊くと―――不意に腕を引かれ、平らな胸に額がぶつかった。
 あまりにいきなりすぎる叔父の行動に、抱きしめられていると気づくまで数秒かかった。


「叔父さん!?」
「―――待たせて、ごめんね」