fanatic fantasia〜冬と幻想夜の物語〜

「ふん…始めからそうしていれば良いものを」
そう言い放ちながら教官は剣を振り上げる。
今度こそ殺される気がした。

力もない。
剣に縋って立っているのがやっとな僕では、避けることも出来なくて…
ただその光景を呆然と見つめていた。
ゆっくりと振り下ろされるその白銀の剣は、白い部屋の中で煌めきながら迫ってくる。

僕はそっと目を瞑り、歯を食いしばった。
少しずつ重いそれに手を掛け引き抜いてゆく。
徐々に刀身を現すその剣は、夕陽を映したかの如き朱を称えていた。

一瞬の出来事。
白く煌めく閃光と、深紅の閃光が交錯する。
金属同士がぶつかり合う音がすると同時に、酷く重たい衝撃が両手に走った。
金切り音と重圧が僕の体に襲い掛る。

何て綺麗なんだろう?
不思議と襲い来る重さも、体に走る痛みも気にならなかった。
それほどこの剣は美しく、禍々しい光沢を放つ。
体に感覚がない…
そう気付いたのはもう一閃、僕の視界で煌めいた時だった。

既に倒れていたらしい、僕の体に教官からの容赦ない一撃が下る。
僕はとっさに引き抜いた朱剣でガードした。
死んでたまるか…
訳の分からないままこんなところに連れてこられて、理由も分からないまま他人に殺されるのを待つのは嫌だ。