fanatic fantasia〜冬と幻想夜の物語〜

「っ……はっふぅ…」
呼吸をするのがやっとで、痛みから発熱する体に酸素の足りない僕の視界は少しずつ歪んでいく。
嗚呼…やっと僕は楽になるのかな?
そう思い少し安心する。

けれど何時まで経っても楽にはならなかった。
それどころか体の痛みが増していく。
今まで右腕だけだった痛みが、背中にも走る。
激痛と酷く熱のこもる背中に、漸く失いかけていた意識が覚醒してしまう。

「誰が寝ろと言った。さっさと立て」
とても冷たい視線で見下ろす教官に、僕はまた切られたのだと理解した。
それと同時に、このまま何もしなかったら痛めつけられながら死ぬ事を悟る。

痛いのは嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
誰か助けて!!
叫びたい気持ちを必死に抑えて、激痛の走る体を少しずつ起こそうと頑張る。
傷を庇う様に触れた右腕は、粘着性を持っていて気持ち悪いくらいに服が張り付いていた。

胴を動かす度に、何かが床に溢れる音がする。
それさえも無視して無理矢理体を起こせば、全身に痛みが走った。
そこから何とかもらった剣を使い、立ち上がる。
それでも今の僕には、戦う気力なんて無くて…そうして立っているのがやっとだった。