序章/君と僕の世界

物心の付く頃から、僕は剣を握っていた。
理由は良く知らない。
そんな事を理解する必要もないと、教官は言った。
ただ剣を振り、強くなる事だけを考えろと。

必死で重い剣を振り上げて、何度も何度も他の子達と斬り付け合う。
何時からこうしているだろう?
たまにそんな考えが過る。
別にホームシックになったわけじゃないけれど…
重い剣と鈍い痛みを強く感じる度に、何でこんな事してるんだろう?
そんな疑問が脳裏に反芻するから――

そっと目を瞑り、思い出す。
僕がまだ平穏な生活を送っていた頃を。
始まりはそうだ。
僕がまだ母と共に遊び回っていた時に、いきなり神父様達が僕等の前にやって来て…何も言わずに僕の腕を強く引っ張って行った。

僕は訳が分からずに母を呼んだ。
けれどただ悲しそうに微笑むだけで、助けてくれなかった。
後にそれは“選定”と呼ばれる名誉ある物だと知るが、僕にとっては痛みしか伴わない不名誉な事でしかない。

それでも僕の家は小さなギルドバーで、経営に少し困っていたから…僕が神父様に“選定”された事を、父は酷く喜んだ。
何故選定されると経営が助かるのか、その理由さえ今となっては分からないけれど…
その日から僕は、この大きな教会に移り住む事になったのだ。