ただ普通の恋がしたかった

嫌だったはずなのに、
なるべく関わりたくなかったのに、
その日から、
尚人さんの存在が
少しずつ大きくなった。

廊下ですれ違っても、
目で追ってしまったり、
他の子といるのを見ると
気分が悪くなる。

でも
私はこれをけして恋だとは認めたくなかった。

「草岡先輩、合計で50人とヤったらしいよ。」

「裏では麻薬の売人やってるらしいよ。」

「少年院に入ってたらしいよ。」

上級生から下級生へとどんどん流れて行く噂が
気になってしまう。

不思議と、本当はどういう人なのか、
少しでも知りたくなってしまう。

これはきっと好奇心だ。
それ以外の、何ものでもない。