気温が一気に下がる、初冬。雪は降らないまでも、吐く息が白い水蒸気を出しながら、空気に消える時期。

季節は冬を迎えようとしていた…。

受験を控えた中学三年生。だが、日々勉強に取り組んでいるマリコにとっては、去年と変わらない学校生活を送っていた。

「ねぇマリコ!ここの問題どうやって解くの?」

勉強が出来る人間の宿命というのか、マリコは学校に居る間は、友達の質問攻めにあっていた。

「んっ?この問題はねぇ…ちょっと!この問題この前教えたばっかりじゃん!」

「えぇ!?そうだっけ?」

「もうっ!ちゃんと覚えとかないと駄目でしょ?もう受験も近いんだよ?」

学校に居ればよく見る光景。当然、このセリフもマリコにとっては、日常茶飯事であり、呆れ半分、諦め半分と言った具合だ。

「ごめぇんマリコ!もう一回教えて?」

「解ったよ…ちゃんと覚えてよ?」

これも日常茶飯事。諦めて見捨てればいいのに、根が真面目な分、それが出来ない…マリコとはそんな人間だった。

そうこうしているうちに、HRが終わり下校の時間、友達と何気ない会話をしながら、家に帰ろうとしたら、校門の方が騒がしい事に気がついた…。

「なんだろうあれ?」

何気なく様子を窺って見ると、うちの生徒と他校の生徒がもめている様な様子だった。

「あれ…二組のトウマ君達じゃない?」