そしてその塀には、出入り口が二つあった。一つは、車が横に三台は通れるぐらいの大きなシャッターがあり、車で出入りする人はそこから出入りしているようだ。

そしてもう一つは、よく見る普通の入口があった。

もちろん俺達は、車で来ているので、シャッターがある入口に車を走らせ、複合地区に入る事にしたんだ。

係員にシャッターをあけてもらい、塀の中に入った俺達だったが、目の前にはもう一つ同じシャッターがあった。

「どうして同じシャッターが目の前にあるんだ?一つだけで十分だろ…」

同じシャッターを二つつける理由が解らない。

「それは、複合地区の様子を完全に見せない為さ。シャッターが一つだけなら、開いた時に中を見られる可能性があるだろ?」

「随分厳重なんだな。そこまでする事もないだろう…」

いくらなんでも厳重すぎる。まるで此処には何かの秘密がありますと周りに誇示している様なものだ。

「…ハヤトもすぐに解るよ。さぁ行こうか!ようこそ、此処が複合地区だ」

後ろのシャッターが閉じるのと同時に目の前のシャッターが開き始めた。完全に開いた先にあったのは…。

何の変哲もないビルが立ち並ぶ、普通の町があった。そう…不自然なぐらい普通の町。

スーツに身を包んだ大人や、作業着を着た20代ぐらいの若い男が町を歩いていたり、話をしていたりといたって普通の町の様子だ。

「どういう事だ?何なんだ此処は…」

情報が一切漏れてこなかった複合地区の真実がこれなのか?別にどうあって欲しいとか理想があった訳では無いが、これでは拍子抜けも良いとこだ…。