俺は先生が様子を見に来ただけだと思っていたのだが、病室に姿を現した人物は俺の思っていた人物ではなかった…。

予想だにしていなかった人物。俺は驚いて声も出てこない…。

目の前に居たのは綺麗な女性だった…年齢は30代前半ぐらいのよく知った人物。

女性物のスーツに身を包んだ女性は、俺に一度頭を下げると病室に入り、目の前まで来ると口を開いた。

「この町に居たんですねタケシ君。随分探しましたよ…」

「…加藤さん、なんで貴女がこの町に居るんだ?」

マスター以外の人物は、入口までしか入って来れないジャッジタウンに、なぜこの人は入ってこれたんだ?

まぁそれも聞きたかったが、俺にはもっと聞きたい事があった。

「色々と手を打って入って来ました。もちろんタケシ君の『お父様』も来ています」

やっぱりそうか。加藤さんは親父の『秘書』だ、加藤さんが居るなら、親父も一緒に来ている事は、容易に予想出来た。

「…俺を迎えに来たのか?悪いが俺は、この町を離れる気はないぜ。親父にもそう伝えてくれ」

「私は、タケシ君を連れて帰りたいと思っているんですが、タケシ君のお父様はそうは考えていないみたいです。ですから安心して下さい…」

それはそれで少し寂しい気もするが…。

でも親父が俺を連れ戻しに来たのでないなら何でこの町に来たんだ?それに手を打ったって何だ?

「加藤さん…親父がこの町に来た理由はなんだ?何をしようとしている…」

どうも嫌な予感がする。親父の職業を考えると、この町に居る事自体がおかしい。

親父は…この国の国会議員だぞ。