賑(にぎ)やかに帰る生徒達がいなくなってから数分後、慌てた彼女がやってきた。
「ごめん!部活無かったはずなんだけど、私が勘違いしてたみたいで…ごめん、本当にごめん。」
彼女は合掌し、何度も謝ってきた。
何だろう…この気持ち…懐かしく切ない感じ。
父親の葬式で出会った優美の事を微かに思い出す。
彼女とはそれから何回か待ち合わせをし、絵を描いたり、犬の散歩をしたりして遊んだ。
今は神戸へ引っ越してしまったが、文通や電話で絆を深めている。

「どうしたの?」
思い出に浸っていた僕の顔を覗き込み、ニコリと笑う彼女を見てなぜこの子がマドンナ的存在なのか分かった気がした。
僕は首を横に振り、笑顔を返して帰路をゆっくり歩いた。
三分の二日の疲れを感じつつ何気ない会話で盛り上がる。

僕は別れ際に必ず明日の約束をした。
汗の量が気にならない夕方がそんな気持ちにさせているのかもしれない。