「キャッ!」
空を眺めて終わり、足元にあった蟻の巣を見つめていると、田んぼの方から女の子の悲鳴が聞こえてきた。
曲げている足を伸ばし、悲鳴の方へ視線を向ける。
すると、田んぼを挟んだ横の道で何かを必死に拾い集めている女の子の姿が。
暇を持て余した僕は同じ年ぐらいの彼女の方へと歩み、散乱している絵の具を一緒に拾った。
彼女は何度も‘ありがとう’と頭を下げる。
こっちも違う気持ちの‘ありがとう’を伝え、家へと帰った。
彼女の視線は家に入るまで感じた。


自己紹介を終え、指定された窓際の最後尾の席へ腰を下ろし、その地方独特のホームルームを受けた。
ガラス越しの日光が心地よく、優しく吹く風に乗ってほのかに香る桜の甘い香りが瞼(まぶた)を重たくさせる。
寝てしまった僕にちょっかいを出す隣の女子生徒。
クラスに一人はいるが、女子生徒は初めて。
目に当たるよう手鏡を調整している。
顔をしかめながら起き、眩しさを強調した。
彼女は合掌(がっしょう)して舌を出して笑っていた。
前を見ると、1時間目の国語が始まっており、退屈しのぎのイタズラだったと気づいた。