翌日、朝からたくさんの親戚が家に集まった。
知っている人から見たこともない人まで幅広く。
式の最中はずっと父の遺影(いえい)を見ていた。
キリッとした表情の父を見たのはそれが最初であり、最後でもあった。

昼になると全員分のお弁当を業者から運ばれ、決められた席で食す。
大人はビールや熱燗(あつかん※お酒を熱くした物)を飲みながら笑って話を始める。
人によっては政治の話やや時事(じじ)の話で意見を交わしているが、大抵は無駄な雑談に過ぎない。
僕はついていけず、珈琲牛乳を持って庭に出て花や雲を眺めて時間を潰していた。
そして、こう思った。
『悲しい時に何故、笑えるのだろうか?』と。
強く拳を握り、涙をこらえた。
潤(うる)んだ目を空に向けて雲を追いかけた。
流れる雲のようにゆっくりと時間が経っていく。