クリスマスソングが町中に響き渡る夜。
僕は彼女と海岸で空を眺めていた。
「四週間前の辛さが嘘みたい。大和君が毎日来てくれていたから耐えれたのかもね。」
無邪気に笑う彼女を見るのは久しぶりで、頬にできるえくぼが喜びを感じさせる。
静かな海岸で好きな人とクリスマスを過ごす時間はかなり儚(はかな)い。
歌手ならばこの状況・この気持ちを歌にでき、画家ならそれを絵にして表現出来る。
だが、僕にはそんな才能がなく、思い出として心の宝箱にしまっておく事しか出来ない。
彼女は何を考えて居るのだろう。
無言で寄り添う僕らは光輝く無数の星を何時間も眺めていた。


それからもずっと一緒にいた。
大晦日はお互いの家へ行き、両親や兄弟達と戯れた。
付き合ってもいないのに不思議な関係を築き、家族ぐるみの仲になっていた。
今でも昔と変わらないくらいの愛を持っている。
『好きだ!』そう言えれば良かった。
たった一言が言えない。
そのせいで何度も傷つき、挫けそうになった。