「! もう大丈夫なの?」

「まだあちこち引きつるが、なんとか」

「……ベリルさん」

 少年は声を震わせてベリルにしがみついた。

「……」

 ベリルは黙って少年の肩をやさしくさする。

「ガンか……」

 仲間から手渡されたカルテに苦い表情を浮かべた。

 それは死ぬ事の無いベリルを憎むように静かに語りかけている。

「だからって健康な人間を憎むのはお門違いってものさ」

 泉は肩をすくめてみせた。

「かつては英雄とまで言われたのに」

 ぼそりと1人の男がつぶやく……

 彼は全てを憎んで死んでいった。

 妻への愛とその妻の裏切り、そして死の恐怖……そんなものが英雄を悪魔に変えたのだ。