「命綱だ、入念にチェックする」
「凄い数……人数分か~」

 チェックし終えたヘッドセットをバッグに仕舞う姿を眺めながら問いかけた。

「ベリルさんのお父さんって、どんな人なんですか?」

「!」

 その言葉に手が止まる。

「覚えていない。いや、そうでもないか」

「どっちなんですか……」

「傭兵では無かったが名うての兵士だった」

「へええ~」

 ベリルはかつて戦術を教わったブルー教官を思い浮かべる。

 国から招かれ、「キメラ」であるベリルの戦術の教官となった。

 ベリルにとっての『父』はきっと彼であっただろう。

 自分のために命を賭けた人々……それは今でも彼の心の中に静かに重たい苦痛を与える。