「……」

 ベリルが眉をひそめて顔を遠ざけると、ドアの開閉スイッチに素早く手をかけた。

「!? しまっ……」

 泉という男はドアの鍵を開けすかさずベリルの上に乗る。

 あまりのあざやかな行動にベリルも少年も唖然とした。

「やぁ」
「出ろ」

 嫌悪感を全面に引き出したベリルの顔を満面の笑みで泉は見つめる。

 しばらくの沈黙が車内を満たしたが、彼らの間ではすさまじい闘いが繰り広げられていた。

「……」

 そんなピリピリした雰囲気を、少年は感じ取る。

 一体この人は……?