父さんの書斎のパソコンに送られてきていたメール。

それは全部で三通で、送信元は父さんが仕事で使っているタブレットからだった。恐らく身の危険を察して現地から送ったのだろう。

一つは事件の詳しい概要と今まで調べて来たこと。

そのなかに、一緒に戦ってくれる筈だった人物に裏切られたと書かれてあった。それが梶先生。ある問題を起して教職を失いそうになっていた先生を助ける代わりに協力をして貰う約束だったらしい。

どうして先生と父さんが知り合いなのかはわからないけど、どこかでなにかが繋がっていたのだろう。人は不思議と繋がっている。

そして、新たに桜木という名前が出て来た。全てを見て来た人達だそうだ。敵か味方か。まだ、判断し兼ねるけれど。この件に関してはクラスメイトの〝桜木さん〟が、(いず)れ答えをくれるだろう。

二つ目は村周辺の詳しい手描きの地図と、現地でとられた写真。自らもこの土地に来て地図を頼りに歩き、写真の場所を把握した。



最後が、父さんの悲痛なメッセージ。

読むたびに涙が込み上げ、音を成さない声が嗚咽として吐き出された。俺は、父さんの思いを決して忘れない。誓ったんだ。

俺が、絶対に止めてみせるって。

「――っ、」

制服の内ポケットにそっと忍ばせたプリントアウトしたメール文。それをなぞるように胸に手をあて、俺はゆっくりと口を開いた。