戦後に起こったとされる、大量殺人について調べていた父さん。

その中でもよく耳にしたのが〝春日井村(かすがいむら)幸村家(ゆきむらけ)〟公にはされていないけど、確かに存在していたと言われているこの事件。

それに深く関わっているのが〝幸村〟の姓を持つ医者一族。

戦後、春日井村に移り住んだ幸村の一族には医学知識とは別に、ある特殊な能力を持つ者がいたというのだ。――名を、幸村(ゆきむら) (ほたる)

そう、全てはこの少女が始まり。
この少女が惨殺されたことが、始まり。

事件を追えば追うほど、父さんは疲弊し物憂げな顔を浮かべるようになった。それが何故なのかは当時の自分にはわからなくて。

けれど、自分自身で調べていくうちに理解した。

父さんが遺していった資料、手紙、日記にメール。なるほど、これは酷い。ほんの少しの同情心も生まれる。でも、だからって父さんが殺されていい道理なんてない。そんなのは間違っている。

あの日、父さんは事件の起こった村へと取材に行った。ある伝手の知り合いと協力をして、事件の真相を暴こうとしていた。

大好きだった父さん。
正義感の強かった父さん。
ジャーナリストだった父さん。

俺が、父さんの遺志を受継ごうと思う。そうでなければ、あまりにも哀しい。母さんと兄さんには反対されたけど、俺は思いを曲げなかった。復讐がいいとは思わない。復讐はなにも生まない。

ああ、そうか。

それでも。あの子の父親も〝復讐〟を遂げたんだったね。なら、やっぱり俺だって。この道しか、もう、残されていないのだから。



そうして俺は、儀式の行われる卒業前に転校して来た。

父さんの調べた情報によれば、儀式の前に〝生け贄〟を選ぶ時間が僅かに与えられるという。ならば、その前に潰してやる。