*
過去に思いを馳せ、また嗤う。鏡に映る姿は代わり映えしない。ちっとも進歩なんてみられない、あの頃と同じ不細工なまま。
「馬鹿やな、私」
じわりと滲む世界に視線を足元に落とす。透明な雫は暗闇に吸い込まれていった。先輩も、こんな風に思っていたのだろうか。
〝あの子〟も。
大人たちの勝手で殺されたという女の子。特別な力のせいで、その命を奪われた哀しい女の子。私たちと同じ、十五歳の女の子。
「じゅう、ご、歳?」
そういえば、歳が一緒だ。これはなにか意味があるのだろうか。
生け贄。
十五歳。
繋がりそうで繋がらない。頭が正常に働かない。働けば、或いは。
「………ぁ、あ゙」
「!!!」
真っ暗なトイレの個室から突然聞えてきた声。思わず落としてしまった懐中電灯が、床、天井、壁と、ランダムに照らしていく。
(も、もしかして幽霊?)
なんて、今は怖くもない。コロコロと転がる懐中電灯がピタリと止まり、ホラー番組も顔負けのタイミングで開けられた扉。ギイ、と歪な金属音。トイレのなかから出てきた人物は、意外な人だった。
「薫ちゃん?」
「…ぁ……み、ちゃ!」
私の顔を見て、嬉しそうに目を細めて近寄ってくれる薫ちゃんに心が揺らめき、安らぐ。私は薫ちゃんが好きだった。純粋で、真っ直ぐに気持ちを返してくれる薫ちゃんが、大好きだった。
「私がいうのもアレやけど、なんで電気つけんの?」
「っ、んぅ?」
首を傾げる薫ちゃんに、笑みが零れる。これは自分を嘲るようなものじゃない自然な笑顔。薫ちゃんは不思議。薫ちゃんは可愛い。
過去に思いを馳せ、また嗤う。鏡に映る姿は代わり映えしない。ちっとも進歩なんてみられない、あの頃と同じ不細工なまま。
「馬鹿やな、私」
じわりと滲む世界に視線を足元に落とす。透明な雫は暗闇に吸い込まれていった。先輩も、こんな風に思っていたのだろうか。
〝あの子〟も。
大人たちの勝手で殺されたという女の子。特別な力のせいで、その命を奪われた哀しい女の子。私たちと同じ、十五歳の女の子。
「じゅう、ご、歳?」
そういえば、歳が一緒だ。これはなにか意味があるのだろうか。
生け贄。
十五歳。
繋がりそうで繋がらない。頭が正常に働かない。働けば、或いは。
「………ぁ、あ゙」
「!!!」
真っ暗なトイレの個室から突然聞えてきた声。思わず落としてしまった懐中電灯が、床、天井、壁と、ランダムに照らしていく。
(も、もしかして幽霊?)
なんて、今は怖くもない。コロコロと転がる懐中電灯がピタリと止まり、ホラー番組も顔負けのタイミングで開けられた扉。ギイ、と歪な金属音。トイレのなかから出てきた人物は、意外な人だった。
「薫ちゃん?」
「…ぁ……み、ちゃ!」
私の顔を見て、嬉しそうに目を細めて近寄ってくれる薫ちゃんに心が揺らめき、安らぐ。私は薫ちゃんが好きだった。純粋で、真っ直ぐに気持ちを返してくれる薫ちゃんが、大好きだった。
「私がいうのもアレやけど、なんで電気つけんの?」
「っ、んぅ?」
首を傾げる薫ちゃんに、笑みが零れる。これは自分を嘲るようなものじゃない自然な笑顔。薫ちゃんは不思議。薫ちゃんは可愛い。



