絶え間なく吹き荒ぶ風の音が、まるで悲鳴のように聞えた。

「真由はもう寝たん?」

起きている人の気配が薄くなり、寂しさからひっそりとちーちゃんに話しかけてみる。未だに解けない緊張と不安を、友人の声を聞くことで少しでも誤魔化したかったのかもしれない。

「薬が効いたんやろうね」
「そっかあ」

けれど、会話は巧く続かなかった。

「……ちょっと、私、お手洗い」

自分から話しかけたくせに、逃げるようにして布団のなかから抜け出す。覚悟もなく急に冷えた空気に触れ、寒さで背筋が震えた。

ストーブは焚かれたままだけど、体育館全体を満遍なく温めてくれるほどの効力はない。元々古い建物で隙間も多く、室内の比じゃない外気のうんと冷えた空気もどんどん侵入してくる。

「懐中電灯、借りてくな」
「ん、暗いけん気をつけて」

気休めのつもりで両手を擦り合わせて息を吹き掛けた。

かじかんだ指先はそのまま、懐中電灯の一つを手に取る。真由や皆を起こさないようにと慎重に足を進めた。でも、どんなに気を付けていても、人より深く沈む床と耳障りな音に溜息が出る。目の前をゆらゆらと照らしてくれるオレンジ色の光が、何重にも見えた。

「はあ、こんな時ぐらい…」

トイレに辿りついた瞬間からマイナス思考全開で嫌になる。鏡に映る自分の姿を懐中電灯で照らして、自嘲(じちょう)気味に(わら)った。

丸い顔に、そばかす。
ぽっちゃりとした身体。
固くて短い髪の毛。

ちーちゃんも真由も、気にすることないよっていつも言ってくれるけど、痩せていて可愛い二人の言葉は苦しくなるだけ。劣等感に、苦しむだけ。二人には、どうしたって私の気持ちはわからない。

「ブスやなあ」

そっと鏡に指を乗せてみる。

直接顔に触れられないのは、私のなかの何かがそれを阻むから。

変わらない顔。
変わらない体型。
変わらない髪質。

勿論、努力をして来なかったわけじゃない。スキンケアもした。ダイエットもした。トリートメントも継続して毎日頑張った。頑張った、けど。なにをしたって劇的な変化は得られなかった。嫌い、嫌い、大嫌い。こんな私には似合わない可愛らしい名前も大っ嫌い。

でも、一番嫌いなのはすぐに悲観的になる自分自身。