まさか体育館で雑魚寝をする日がくるなんて思わなかった。

女の子たちは布団をくっつけ、出来るだけみんなで纏まっている。その心理は痛いほどによくわかった。でも、僕ら男子は変なプライドが邪魔をしてつかず離れずの微妙な距離感。それでも。

僕の隣には親友の怜。ライバルの、怜。

(なんて、思っているのはきっと僕だけやろうな)

怜はいつだって穏やかで優しくて、尊敬出来る奴だった。そして今日という日が、それを更に確固たるものへと変えていったと思う。

僕はあんな風に出来やしない。いつだって怜の後を追っていた僕だけど、結局それも無駄だったみたいだ。

「セン?大丈夫なんか?」

ほら、こんな時にでも怜は人の心配が出来る。仮面なんて被らずに自然と人に優しくすることが出来る。だからこそ親友でいられた。怜のおかげで僕は、今の今まで嫌な奴にならなくて済んだんだ。

「ああ、大丈夫や。それより怜は?」
「ん、セン達のおかげで、俺も大丈夫」

そう言うと怜は、屈託のない笑顔を僕に向けてくれる。

その笑顔に何度救われたことか。ちゃんと言葉に出したことはないけど、いつも思っていたよ。自慢の親友だって。