美月は昔からの夢だった調理師になる為に、設備が整った専門の学校へと進む。ちーちゃんはその頭の良さと学級委員長も難なくこなせる度量で、県内でも有数な進学校への推薦入試が決まっている。
輝いている二人。そんな二人にくっついて、オマケでその道に進むなんて事はしたくない。けれど、私には夢もなければ行きたいと思える高校さえ見つける事が出来ない。それは焦れば焦るほどに。
だから、進路希望の紙を白紙で提出した。
遅かれ早かれこうやって呼び出されるんだろうなと、解っていながら白紙で出した。だって、どうしても書けなかったんだもの。
「どうした、佐々木?」
先生の声で、頬に流れる涙の存在に気付く。
恥ずかしい、悔しい、情けない。ぐちゃぐちゃになった感情は、緩みきった涙腺を容赦なく刺激した。人前で泣くだなんてしたくはなかった。しかも自分が嫌いと認識している人物の前で。
「……っく…う…ぅ」
重ね合わせていた手を解き、スカートをギュッと握り締める。けれど、涙は止まってはくれない。巧くコントロール出来ない。
不意に、頭の上へもう一度先生の大きな手が乗せられた。その手は優しくゆっくりと上から下へ、動かされる。
「いっぱい悩んだらいいよ。無理して答えを出さなくてもいい。佐々木は、佐々木だもんな?」
優しい手の動きと、優しい声。これは何という魔法なのだろう。
「佐々木はさ、いつも眉間に皺寄せすぎ」
「……みけん?」
「そ、ここの皺取ってさ」
「っいた」
「笑った方が絶対に可愛いと思うよ、俺はね」
ぱちりと瞬いた瞳から涙が零れ落ちる。その一粒を最後に、頬が一気に熱を持った。触れられている箇所も、熱くて、むず痒い。
「続きは明日にしような?」
なんで、どうして。こんなの知らない。胸が苦しいよ、先生。
輝いている二人。そんな二人にくっついて、オマケでその道に進むなんて事はしたくない。けれど、私には夢もなければ行きたいと思える高校さえ見つける事が出来ない。それは焦れば焦るほどに。
だから、進路希望の紙を白紙で提出した。
遅かれ早かれこうやって呼び出されるんだろうなと、解っていながら白紙で出した。だって、どうしても書けなかったんだもの。
「どうした、佐々木?」
先生の声で、頬に流れる涙の存在に気付く。
恥ずかしい、悔しい、情けない。ぐちゃぐちゃになった感情は、緩みきった涙腺を容赦なく刺激した。人前で泣くだなんてしたくはなかった。しかも自分が嫌いと認識している人物の前で。
「……っく…う…ぅ」
重ね合わせていた手を解き、スカートをギュッと握り締める。けれど、涙は止まってはくれない。巧くコントロール出来ない。
不意に、頭の上へもう一度先生の大きな手が乗せられた。その手は優しくゆっくりと上から下へ、動かされる。
「いっぱい悩んだらいいよ。無理して答えを出さなくてもいい。佐々木は、佐々木だもんな?」
優しい手の動きと、優しい声。これは何という魔法なのだろう。
「佐々木はさ、いつも眉間に皺寄せすぎ」
「……みけん?」
「そ、ここの皺取ってさ」
「っいた」
「笑った方が絶対に可愛いと思うよ、俺はね」
ぱちりと瞬いた瞳から涙が零れ落ちる。その一粒を最後に、頬が一気に熱を持った。触れられている箇所も、熱くて、むず痒い。
「続きは明日にしような?」
なんで、どうして。こんなの知らない。胸が苦しいよ、先生。



