「先生、写真をもっと見せて貰ってもええですか?まだあるって言うてましたよね?……ふふ、もう、全部見せてください」
開き直って、笑うことも止めなかった。向けられる視線が愉快だ。
「お前らもなあ、自分に正直に行動した方がええんやないか?こんな時にまでええ子ブリッコしとっても意味ないやろう?」
「……暁人」
所詮、飛鳥もこちら側の人間ではなかったか。
「それと、ほんまはもう解っとるんやろ?」
「暁人、おまえ、なに…」
「おい!藤、やめえ!」
「藤森くん…!もうやめてえ!」
「このなかで!十五人のなかで誰が死んだらええか!」
ゆらりと立ち上がり、僕はある人物の方へと体を向けた。その行動に皆が息を呑む。ほらみろ。やっぱり、な。
「あー……?」
赤茶色の髪の毛を腰の位置まで伸ばし、いつもセーラー服の上から着ている白いカーディガンはある種のトレードマーク。顔立ちは可愛らしい思う。だからこそ余計に、焦点の合っていない瞳に半開きの口がちぐはぐで、得も言われぬ不安に駆られた。
このクラスに虐めは存在しない。けれど浮いた存在の人物は居た。
桜木 薫。幼いころの交通事故のせいで脳に傷がつき、失語症になってしまった女子生徒。全く喋れないわけではないが、彼女と意思の疎通を図ることは難しい。更に彼女は、生まれつきの心疾患も患っていて学校は休みがちだった。卒業間近だからと健気にも出席した日にこんなことになるなんて、運がないとしか言えない。
「……ふ、ぢ…」
自分が話題に上がっていることを理解したのか、桜木は恐らく僕の名前を呼びながら、こちらへ向かって歩いてこようとする。
「桜木だって楽になりたいんやないんか?そんなんで生きとっても辛いだけやろう?なあ、お前らだって僕と同じことを一度は考えたんやないんか!そうなんやろう?!」
本能のまま喚き散らし、高揚感すら覚えた。人はこんなにも正直なのか。反論してこない辺り、図星なのだろう。誰だって自分が死にたくないと思うはずだ。そして、その為には自分より劣る人間。
〝死んだって仕方のない奴〟
残酷だけれど、探したに違いない。先輩たちは虐めの対象だった人物を選んだ。そうなれば自分たちは?自ずと答えは出るだろう。
瞼の裏に浮かんだ人物。桜木だったんじゃないのか?僕と同じように思った奴が大半なんじゃないのか?本当に、笑える。
それにしても僕は、いつからこんなに歪んでしまったのだろう。元々の性格なのだろうか。人格形成の問題?いや、人の痛みを知ることが出来たのならば、少しは変われていた気もする。なんて、自分自身が傷付いたこともないくせに戯言だな。誰か試しに僕を殴ってくれたらいいのに。僕に痛みをくれたらいい。そうすれば、
「!!!」
そう、思った瞬間。右頬に凄まじい痛みと衝撃を感じた。痩せ型で身長の低い僕は、いとも簡単にその衝撃で吹き飛ばされる。
「暁人、もう、ええやろ」
体と共に飛んでいってしまった眼鏡のせいで、顔がぼやけて見えない。けれど、その声はちゃんと耳に届いていた。
なんで殴った奴の方が痛そうなんだ?何でこんな僕の為なんかに、お前が苦しそうなんだよ。見限ったんじゃなかったのか?
開き直って、笑うことも止めなかった。向けられる視線が愉快だ。
「お前らもなあ、自分に正直に行動した方がええんやないか?こんな時にまでええ子ブリッコしとっても意味ないやろう?」
「……暁人」
所詮、飛鳥もこちら側の人間ではなかったか。
「それと、ほんまはもう解っとるんやろ?」
「暁人、おまえ、なに…」
「おい!藤、やめえ!」
「藤森くん…!もうやめてえ!」
「このなかで!十五人のなかで誰が死んだらええか!」
ゆらりと立ち上がり、僕はある人物の方へと体を向けた。その行動に皆が息を呑む。ほらみろ。やっぱり、な。
「あー……?」
赤茶色の髪の毛を腰の位置まで伸ばし、いつもセーラー服の上から着ている白いカーディガンはある種のトレードマーク。顔立ちは可愛らしい思う。だからこそ余計に、焦点の合っていない瞳に半開きの口がちぐはぐで、得も言われぬ不安に駆られた。
このクラスに虐めは存在しない。けれど浮いた存在の人物は居た。
桜木 薫。幼いころの交通事故のせいで脳に傷がつき、失語症になってしまった女子生徒。全く喋れないわけではないが、彼女と意思の疎通を図ることは難しい。更に彼女は、生まれつきの心疾患も患っていて学校は休みがちだった。卒業間近だからと健気にも出席した日にこんなことになるなんて、運がないとしか言えない。
「……ふ、ぢ…」
自分が話題に上がっていることを理解したのか、桜木は恐らく僕の名前を呼びながら、こちらへ向かって歩いてこようとする。
「桜木だって楽になりたいんやないんか?そんなんで生きとっても辛いだけやろう?なあ、お前らだって僕と同じことを一度は考えたんやないんか!そうなんやろう?!」
本能のまま喚き散らし、高揚感すら覚えた。人はこんなにも正直なのか。反論してこない辺り、図星なのだろう。誰だって自分が死にたくないと思うはずだ。そして、その為には自分より劣る人間。
〝死んだって仕方のない奴〟
残酷だけれど、探したに違いない。先輩たちは虐めの対象だった人物を選んだ。そうなれば自分たちは?自ずと答えは出るだろう。
瞼の裏に浮かんだ人物。桜木だったんじゃないのか?僕と同じように思った奴が大半なんじゃないのか?本当に、笑える。
それにしても僕は、いつからこんなに歪んでしまったのだろう。元々の性格なのだろうか。人格形成の問題?いや、人の痛みを知ることが出来たのならば、少しは変われていた気もする。なんて、自分自身が傷付いたこともないくせに戯言だな。誰か試しに僕を殴ってくれたらいいのに。僕に痛みをくれたらいい。そうすれば、
「!!!」
そう、思った瞬間。右頬に凄まじい痛みと衝撃を感じた。痩せ型で身長の低い僕は、いとも簡単にその衝撃で吹き飛ばされる。
「暁人、もう、ええやろ」
体と共に飛んでいってしまった眼鏡のせいで、顔がぼやけて見えない。けれど、その声はちゃんと耳に届いていた。
なんで殴った奴の方が痛そうなんだ?何でこんな僕の為なんかに、お前が苦しそうなんだよ。見限ったんじゃなかったのか?



