怜くんが〝死〟を選んだ。本当は今すぐにでも怜くんのもとへ行って、泣いて、縋って、喚いて、止めたい。けれど、そうすることが出来ないのは、彼から貰った言葉のせい。

『可奈のこと、ちゃんと、好きだった』

彼のこの言葉が私を金縛りにさせる。一歩も動けない。

「……可奈ぁ」

理恵が目に涙を浮かべながら、私の体を支えてくれる。嬉しいけど、哀しい。怜くんは、私と理恵がしたことを全部知っていた上で、許してくれた。そして今、守ってくれようとしている。

こんなにも汚い私を。守る価値もないのに。

私ね、ちゃんと解ってた。だって自分自身のことだもの。嫌になるぐらい解ってた。自分がどれほど汚い人間かを。解ってたんだ、ずっと。昔から私はそう。嫉妬深くて、自分が中心じゃないと嫌で、自己顕示欲の固まりのような人間。

だから、羨ましかった。妬ましかった。亜矢が。

『亜矢ちゃんマラソン一位おめでとお』
『今日の髪型おしゃれやなあ。自分でやったん?』
『器用で羨ましいわ~』

『全然、そんなんやないんよ。でも、ありがとお』

ちょっと控えめで可愛くて、皆から人気があって、勉強もスポーツも出来る性格の良い女の子。私がどんなに努力をしても、亜矢のように可愛くはなれなかった。勉強もスポーツも、どれだけ頑張っても、亜矢は軽々と超えていく。黒く、黒く、嫌な感情が広がった。

何も考えずに過ごせた幼少期は、素直に一緒に居ることが出来ていた気がする。三人で居る時が何よりも楽しくて、何よりも幸せだった。ずっと、一緒に居たいと思ってた。居られると思ってた。

でも、裏切ったのは私。友情を壊したのは私。

亜矢のこと、凄く好きだよ。だからこそ憎い。疎ましい。亜矢と居ると惨めになる。私という存在が霞んでしまって惨めになるの。

ズルイよ。ねえ、誰か気付いて。〝私〟に気付いてよ。

日ごと増す嫉妬心に苦しんでいた時、私は怜くんに救われたんだ。