「あんまり遅れてもなくない?まだ来てない人が結構いるよ」
「げ!ブチありえんが!」
ぎゃあぎゃあと喚く清宮君と、しれっと流す黛君。なんだか彼らは良いコンビになりそうだ。だって、息ピッタリなんだもの。
「ちーちゃーん!」
「悪い、遅うなった!さっきそこで藤と飛鳥と一緒になったけん花を………って、ああああああああ?!?!」
賑やかな空間。あたたかな、優しい人達。
「ちょ、花束買っとるんなら先に教えとってぇやー!俺らわざわざ摘んで来たんで?めっちゃ綺麗くない?」
「いや、連絡ちゃんと回したで?」
「……あ、スマホ忘れとる」
「どうせ学校周りは圏外やん」
「…お、おお、それもそうやな、いや、でもなあ」
「竜、ドンマイ。ほんで、どう責任とってくれるんや?」
「えっ!!」
「とんだ無駄な行動やったなー」
「ぐっ!!」
森君と、藤森君と日野君から批難轟々の桐谷君。そんな様子を見守りながら、花束を持っている亜矢ちゃんは小さく笑っていた。
「皆、楽しそうやなあ」
「うん!ほんまにね」
私と薫ちゃんの腰に腕を絡ませる、真由と美月の表情も明るい。
そう、私達は決めたんだ。
あんな事があったからこそ明るく過ごして行こうって。
それが今まで犠牲になって来た人達の、なによりの供養になるんじゃないかなって、皆で話し合った。特に辛い立場である薫ちゃんと黛君も「嬉しい」と笑ってくれたから。だから。
「さあ、くっちゃべってないで行こうで!やっと揃ったんやけん」
手を叩きながら大声を出すと、皆が一斉に私の方を見た。
「委員長、健在やな」
「じゃな、ブチ怖ぇー!」
「おかあちゃん怒らんとって~」
「あんたらボコすで!」
笑って、泣いて、怒って、精一杯、生きて行こう。
桜の花びらが春の風に撫でられて、ひらひらと舞う。私達が三年間過ごした学び舎。ここを飛び出し、それぞれの道へと進んで行く。
「そう言えば、ちーちゃん」
不意に私の目元を見る薫ちゃんに、思いきり口の端を持ち上げた。
「実は、ダテ眼鏡だったんよ」
驚いた?と言わんばかりに声を弾ませると、薫ちゃんはニカッと最高の笑顔を返してくれる。委員長なんてやっていたけど、本当はそんな器じゃなかったの。だから、レンズを通すことで自分を作りだしていた。理想の委員長へ、自分の憧れていた、自分へ。
でも、もう要らないから。
それに意外と地だった事がわかったしね。眼鏡を外した世界は、もっと視野を広げてくれたよ。キラキラと光りと希望で溢れてる。
「じゃあ行こうか?お花、届けんとね」
「……うん、ありがとお」
「で、その後は皆でダベリ会!という名の花見や!」
「ふは!ほんま楽しみ」
先へ歩き出す、皆の後へと続く。
ずっと同じ場所で、同じ制服を着ていたクラスメイト。けれど〝今〟目の前にいるのは、それぞれに選んだ道への第一歩となる制服に身を包んだ、少し大人の顔をした十四人。ううん、十五人。
「委員チョー!桜木ー!」
「今、行くけん!」
通いなれた学校、いつも踏みしめていたグラウンド、自然の匂いに季節の虫の音。忘れることなどできない尊き日々を、この胸に。
さようなら、中学生の私達。
さようなら、『 』
「げ!ブチありえんが!」
ぎゃあぎゃあと喚く清宮君と、しれっと流す黛君。なんだか彼らは良いコンビになりそうだ。だって、息ピッタリなんだもの。
「ちーちゃーん!」
「悪い、遅うなった!さっきそこで藤と飛鳥と一緒になったけん花を………って、ああああああああ?!?!」
賑やかな空間。あたたかな、優しい人達。
「ちょ、花束買っとるんなら先に教えとってぇやー!俺らわざわざ摘んで来たんで?めっちゃ綺麗くない?」
「いや、連絡ちゃんと回したで?」
「……あ、スマホ忘れとる」
「どうせ学校周りは圏外やん」
「…お、おお、それもそうやな、いや、でもなあ」
「竜、ドンマイ。ほんで、どう責任とってくれるんや?」
「えっ!!」
「とんだ無駄な行動やったなー」
「ぐっ!!」
森君と、藤森君と日野君から批難轟々の桐谷君。そんな様子を見守りながら、花束を持っている亜矢ちゃんは小さく笑っていた。
「皆、楽しそうやなあ」
「うん!ほんまにね」
私と薫ちゃんの腰に腕を絡ませる、真由と美月の表情も明るい。
そう、私達は決めたんだ。
あんな事があったからこそ明るく過ごして行こうって。
それが今まで犠牲になって来た人達の、なによりの供養になるんじゃないかなって、皆で話し合った。特に辛い立場である薫ちゃんと黛君も「嬉しい」と笑ってくれたから。だから。
「さあ、くっちゃべってないで行こうで!やっと揃ったんやけん」
手を叩きながら大声を出すと、皆が一斉に私の方を見た。
「委員長、健在やな」
「じゃな、ブチ怖ぇー!」
「おかあちゃん怒らんとって~」
「あんたらボコすで!」
笑って、泣いて、怒って、精一杯、生きて行こう。
桜の花びらが春の風に撫でられて、ひらひらと舞う。私達が三年間過ごした学び舎。ここを飛び出し、それぞれの道へと進んで行く。
「そう言えば、ちーちゃん」
不意に私の目元を見る薫ちゃんに、思いきり口の端を持ち上げた。
「実は、ダテ眼鏡だったんよ」
驚いた?と言わんばかりに声を弾ませると、薫ちゃんはニカッと最高の笑顔を返してくれる。委員長なんてやっていたけど、本当はそんな器じゃなかったの。だから、レンズを通すことで自分を作りだしていた。理想の委員長へ、自分の憧れていた、自分へ。
でも、もう要らないから。
それに意外と地だった事がわかったしね。眼鏡を外した世界は、もっと視野を広げてくれたよ。キラキラと光りと希望で溢れてる。
「じゃあ行こうか?お花、届けんとね」
「……うん、ありがとお」
「で、その後は皆でダベリ会!という名の花見や!」
「ふは!ほんま楽しみ」
先へ歩き出す、皆の後へと続く。
ずっと同じ場所で、同じ制服を着ていたクラスメイト。けれど〝今〟目の前にいるのは、それぞれに選んだ道への第一歩となる制服に身を包んだ、少し大人の顔をした十四人。ううん、十五人。
「委員チョー!桜木ー!」
「今、行くけん!」
通いなれた学校、いつも踏みしめていたグラウンド、自然の匂いに季節の虫の音。忘れることなどできない尊き日々を、この胸に。
さようなら、中学生の私達。
さようなら、『 』