名乗った。
リヒターはその名前に興味を持ったよう
だ。

「ツバクラ?」

「お父さんの苗字。お父さんは日本人だ
ったんだ」

「ノインは?」

「名前は覚えてなくて、ずっと呼ばれて
いた、ノイン(9)って番号を、名乗っ
てる」

ノインは小さな声で答えた。

「ふん、そうか。じゃあ通り名は?」

「ノイン」

「そうか。じゃ、このまま呼ぶのはまず
いな」

そういうことを言ってるときも、甘い目
線ははずさない。
声はごく小さいので、ハタ目に見たら、
絶対こんな会話しているようには見えな
いだろう。