「本当は、こんな変なことには巻き込ま
れたくないんだ。けど、他ならぬベリル
の頼みで仕方なく」
「それは、悪かった」
「いや。着れば?それ。背中、目立つん
じゃない?」
リヒターは、さっきの温厚さを一瞬で纏
うと、にっこりした。
「そだね。かりる。ありがと」
ノインは素直にそれを着ることにした。
黒のシャツだ。
血が滲んでも目立たない。
「ここで、ちょっとおりていいかな」
カフェのようなものが目に入った。
「あんたをさっきの場所で見つけて、一
目ぼれして、思わず車に乗せたってこ
とにしときたい。だから、オレが口説い
てました。っていう目撃者を作っておき
たい」
はいはい。
車は、止まった。

