「まあね。ここに潜入して、一般人になり
きって、情報収集をしている」
「え?それだけ?」
「そうだ。今の世の中、情報の90%以上
は、普通にニュースを見て新聞を読めば
得られる。つまり、普通に生活していれば
いいだけだ。身分がバレない限り、何も
危険なことはない。それがどれだけつま
らないことかは別にして」
「つまらないんだ」
「そうだ」
さっきまでの温厚な雰囲気が消失した。
ギラギラと野望を秘めた目になっている。
こういう本性を、あたしにもバレないで
包み隠せていたなんて。
怖いくらいの才能だな。
ノインは感心してリヒターを見た。
「けれど、あともう少し、この安穏な生
活を耐えると、オレは本部に戻されて、
少しはスリルのある任務に就かせてもら
えるんだ」
ギロリと、ノインを見る。
ゾクリとする。

