車が動き出す。
ノインは少し緊張した。
リヒターさんに、守衛の前につまみださ
れたらどうしようかと、どうしても疑っ
てしまう。本当にこの人は、人畜無害な
一般人で、秘密の組織にな内通してたり
しそうには、絶対に見えないのに。
それでも、
“怪しい人物”
として、差し出されるかもしれない。
けれど、リヒターは、何のスリル感もな
く、開いた門を通り抜けたようだった。
「もう、大丈夫だ」
ノインはそっと隙間から出た。
と、
布の塊が頭に降りかかってきた。
「オレの私服で悪いけど」
ノインはハッとした。
あちこちから血をふいているであろう、
背中の傷を見られてしまったのだと気
づいた。
巧妙に隠したつもりだった。

