奇麗に作られたイングリッシュガーデンな
庭のおかげで、身を隠す場所はあった。
そこに潜んでいると、車が外から入ってく
るのが見えた。
守衛に身分証明をすると、門を開けてもら
えるようだ。
車の中から、スーツ姿の若い男が降り、
後部ドアを開けて、荷物を運び出してい
た。
段ボールの箱が無造作に詰められた空
間から、それはいっぺんに取るのは無
理でしょう的なやり方で引き抜いている。
ノインは思わず彼に近づいた。
「手伝うよ」
英語で言うと、
「ダンケ(ありがとう)」
ドイツ語で返事が返ってきた。
拷問した奴らはラテン系の白人だったけ
ど、彼はゲルマン系のちょっといかつい
目に整った顔をしていた。
ドイツ語喋ってるし。
「ドイチェ?」
訊くと、
「まあね。アメリカにきて、5年だけど」
英語だった。
ノインは日本語ドイツ語は両親の影響で喋
れるのだが、英語の方は、荒削りで、あま
り上手くはなかった。

