困ったな。
何の支度もなしに、いきなり本拠地だなん
て。
まあ、どうせ、そのつもりではいたのだけ
れど。
今持っているモノは、物質Xを弾丸に込め
た銃一丁。
それに、ナイフ。
愛用の拳銃もない。
物質Xをぶっ放して、派手に押し入る。
なんて、とても楽しそうなんだけれど、
きっと、また捕まるし、後でバレたらベ
リルに怒られるに違いない。
それに、何より、体がまだ、弱りすぎて
る。
くっそ。
あの拷問担当、絶対サドだ。
鞭で打ちつけながら、だんだん顔に怖い
笑みが浮かんでくるのを、あたしが見逃
したと思うな。
次会ったときは覚えてろ、だ。
あたしはサドじゃないから、一発で仕留め
てやるけど。
ノインは、怒りに力を使い果たしたらしく、
座り込む。
とにかく、どこかに隠れてなきゃ。