「星さん、あなたの番よ」


不二子ちゃんが、帽子のつばをほんの少し上げ、あたしを呼んだ。


汗と体温で熱くなってるグリップにそっと手を置き、ボールを何度か地面についたあと打つサーブ。

パスーン。

不二子ちゃんの足元に綺麗に落ちた。


「はい、もうひとつ!」


2回目に打ったのは大失敗のホームラン。


「あーあ」


詩織ちゃん達の声と一緒にボールを目で追うと、


見上げた青空、テニスボールは太陽と重なって、眩しさのあまり見失う。


「よっ、杏奈!ナイスバッティング」


ドキッとする声。


振り返るとフェンスの隙間に指をかけ、ニッコリ笑う姿。


鳴海?


「ホームランだなぁ…、その髪、いいじゃん、超似合ってるサイコー!」


雲ひとつない青空は、あたしの愛しい人をより眩しく見せる。


照り付ける太陽も憎めないな。


あたしは少しだけ揺れる柔らかい髪の束を抑えて笑った。