____苺の季節____

「いや~、でも、杏の近況は少しは知ってるんで、

余計な事は極力言わないように気を遣ってるんですよ?

一応、パートの同期ですから」


「さ、里ちゃん……」


実は、里ちゃんとあたしは出身校は別だけど、入部が初対面ではない。


かつて、中学校吹奏楽連盟の合同演奏で隣り合わせた縁がある。


ステージ上には市内の吹奏楽部3年生がずらりと並び、ぶっつけ本番でセッションする形式だった。


その時、隣にいて、

「あたし、緑中学校の高松です、どうも!」

「あたしは飛鳥中学校の星です、宜しく!」


そう、言葉を交わした。


安定した厚みのある低音が印象に残る子で、セッションが終わると握手をした。

そして、この春、見学の時からお互い気になっていて、


初のパート練習の時に、


『そうだよねー!あの時の―、覚えてる!!』

『まさか、同じ高校になるなんて!』


と、運命のような再会をしたんだ。