突然、名前を呼ばれて驚いた。
え?
聞いた事のある声と、背後に感じる雰囲気。
ずぶ濡れの顔を拭くハンカチを探して制服のポケットに手を入れる。
慌てて引っ張り出したから、自転車の鍵も飛び出して、チャリンチャリンと床を鳴らした。
「あらら、あわてんぼさんだな」
あたしは、余計慌てて、赤と白のギンガムチェックのハンカチで、顔をごしごし拭いた。
前髪から滴が落ちるのはわかってたけど、まず、声の主を確認したくて振り返る。
「紅林君……?」
紅林君は、さっと腰を折り曲げて、床に転がった自転車の鍵を長い指で摘まんだ。
「はい、これ、大事なもの……」
ストン…とあたしの手の中に落とした。
「…ありがと」
「あ、そうそう…、星さんのピンク色の自転車、あれ凄く可愛いよね」
柔らかい声で言う。
あたしはちょっと痛む胸を抑え、微笑んだ。
「桃ちゃんの事、知ってるの?」
「桃ちゃん?」
「そ、あの子、桃ちゃんて言うの」
キュッキュッと蛇口を戻す。
「へぇ…、やっぱ、可愛いな」
「良いでしょ?あたしの愛車、新車だよ、ちょっと大きいけど」
鏡の向こう、あたしの後ろにいる紅林君に微笑むと、紅林君も頷きながら、ちょっとだけ笑った。
サラサラの茶髪が、端正な顔立ちを綺麗に縁取ってる。
「あれ…?紅林君も自転車なの?」
「いや」
「じゃあ、どうして?」
流し台の跳ねた水を、備え付けの布巾で拭きながら尋ねた。
「俺さ、その、見てるんだ……、
いつも、星さんの事…」
「え?」
鏡の中、紅林君の顔を見上げる。
え?
聞いた事のある声と、背後に感じる雰囲気。
ずぶ濡れの顔を拭くハンカチを探して制服のポケットに手を入れる。
慌てて引っ張り出したから、自転車の鍵も飛び出して、チャリンチャリンと床を鳴らした。
「あらら、あわてんぼさんだな」
あたしは、余計慌てて、赤と白のギンガムチェックのハンカチで、顔をごしごし拭いた。
前髪から滴が落ちるのはわかってたけど、まず、声の主を確認したくて振り返る。
「紅林君……?」
紅林君は、さっと腰を折り曲げて、床に転がった自転車の鍵を長い指で摘まんだ。
「はい、これ、大事なもの……」
ストン…とあたしの手の中に落とした。
「…ありがと」
「あ、そうそう…、星さんのピンク色の自転車、あれ凄く可愛いよね」
柔らかい声で言う。
あたしはちょっと痛む胸を抑え、微笑んだ。
「桃ちゃんの事、知ってるの?」
「桃ちゃん?」
「そ、あの子、桃ちゃんて言うの」
キュッキュッと蛇口を戻す。
「へぇ…、やっぱ、可愛いな」
「良いでしょ?あたしの愛車、新車だよ、ちょっと大きいけど」
鏡の向こう、あたしの後ろにいる紅林君に微笑むと、紅林君も頷きながら、ちょっとだけ笑った。
サラサラの茶髪が、端正な顔立ちを綺麗に縁取ってる。
「あれ…?紅林君も自転車なの?」
「いや」
「じゃあ、どうして?」
流し台の跳ねた水を、備え付けの布巾で拭きながら尋ねた。
「俺さ、その、見てるんだ……、
いつも、星さんの事…」
「え?」
鏡の中、紅林君の顔を見上げる。
