そう言って背中を向け、キュッキュッ…と水道の蛇口を閉める。
「あ、ありがとうございます…、すいません、すいません…あの、あたし」
「いいって…、気にすんな…、俺はさ、お前と音楽やれるから良いんだ…、一緒に頑張ろうな…、コンクールも定演も、マーチングも行けるところまで行くからな」
にっこり笑うと、アイドルみたいな先輩に戻ってた。
「はい」
「声がちいせぇよ」
「はい!」
「よし、バケツ持て、ダッシュだ」
「え?ちょ…」
「大丈夫、お前なら出来る、ほら、行くぞ」
バケツを両手にさげ、先を行こうとする彰先輩は、いたずらっ子みたいに笑ってた。
「待って下さいよ」
急いで追いかける。
空には真ん丸の月。
微笑む光は、夏の夜の戸惑いをそっと包んでくれたんだ。
そっと、優しく。
