____苺の季節____

「杏?アイツと別れて俺と付き合わないか?

やっぱ、もう、ダメだ、俺、


眠れないくせに、泣きたいくせに、周りに気を遣ってばっかで、ムードメーカーになって皆を笑わせて、動き回って、働いて……、



ホントは辛いって泣き事くらい言えばいいのにって…、

そう思って、ずっとずっと見てた、



無理してばっかいねーで力抜けよ、


ほっといたら、お前はどこまでもいつまでも頑張るから…、




なぁ?杏」




抱きしめたまま何も言わずにいる先輩の手のひらが、あたしの背中をキュッと押す。


あたしは、Tシャツ1枚越しに伝わる先輩の胸の温度に戸惑いながら心で言葉を探してた。


先輩の腕が強いから、胸が広いから、温かく包まれたから…、張り詰めてた色んなことが溢れてきそうだった。


でも、ダメ…。
あたし…。


ぐっと目をつむり、首を何度も横に振った。








腕の力をほどいて、あたしの髪をくしゃっと撫でる指先が優しくて戸惑う。


そして、あたしを見つめる瞳に戸惑う。




全部見透かされてた驚きと、切なさと、先輩がくれた想いの熱さが胸の中で波を打ってた。


先輩は、ニコッと笑った後、心配そうに見つめた。



「ごめん、ごめんな?」



あたしの事を、大事なモノみたいに扱って、そっとほっぺを包んだ両手が震えてた。

震えてたから…、胸が苦しくて、あたたかくて、すぐに言葉が出なかった。