____苺の季節____

私と鳴海は、ふたり共、浴衣を着てお祭りに行く事になった。


夏祭りが行われる金、土、日曜日の3日間、自宅に外泊許可をとったお母さんが着付けをしてくれると言う。


土曜日の夕方、鳴海の家に行った。


着せてもらった藍染めの浴衣は、朝顔が慎ましく描かれ、品があり、大人っぽい雰囲気。


「へー、馬子にも衣装ってよく言ったものだな」


「え、それ誉めてない~」


「鳴海…?冗談はやめなさい、ごめんね、杏奈ちゃん、この子ったら照れちゃって」


「べ、別に」


鳴海はテーブルの上にある麦茶をごくごく飲んだ。


コトン…とテーブルに戻されたグラスの中で、氷がカランと鳴る。


空いた窓からは夏のむせかえる匂い。


お母さんが作ったガラスの風鈴が、チリンとひとつ涼やかな音色を歌う。


「艶のある肌がまた色っぽいわね」


「母さん、何言ってるんだよ」


「本当よ、肌のきめ細かさは、若さの特権だもの、羨ましい」


あたしの頬っぺを包む両手の指は、細くしなやかで女性らしかった。


「この髪飾りも、帯も、そして下駄も全部あげるから使ってね」


もう一度帯を整えて、ニッコリ笑った。