「そのトラックは誰が運転すんだよ。
それにトラックまで運ぶことすらできないだろ?
それから、どこのバスケットリングを狙うんだ?
もともと生産不足なんだ。
俺たちが盗んだところで、俺らは楽しめていいけどよ、悲しむ奴がいるんだぞ?」
「う……そんな難しいこと俺、わからへんもん!!」
ザキはそのまま膝を曲げてしゃがみこんだ。
頭を乱暴にガジガジとかいて。
「わからなくても、よくないってことだけはわかるだろ?どうせ盗むなら誰も悲しませないものを盗む」
ダム……ダム…………。
ボールを拾い上げてドリブルを繰り返す。
ゆっくりボールをついたり、はやくついたり……速さに緩急をつけて。
「……面白いことって見つけんの、難しいな」
ザキが何気なく呟いた言葉。
俺もずっと同じこと思ってた。
「そうだよ。毎日毎日同じこと繰り返してつまんねーけどよ、いざ、面白いことってなんだって言われると難しーんだよ」

