帰り道、ちょうど太陽が西の彼方に沈むところであった。

真赤だ。すごく綺麗だ。

ジョンは川に架かる橋の上でなんとなく立ち止まり、今から沈まんとする太陽を眺めた。
東からは既に、鋭い光を放つ三日月がのぼっていて、これからはおれの時間だ、とでも言うように自己主張をしていた。
月も奇麗だ。

びゅ、と冷たい風が吹いた。

風は嫌いだ。
その冷たさに、自分が一人ぼっちなのだという事を思い知らされてしまう様な気がするのだ。

ああ、煙草が吸いたいな、と思ってジョンは右のポケットを探った。
煙草がない。そうだ、そういえばマークに取り上げられてしまったんだ。

吸いたい、吸いたい。

ひどくイライラする。

このスッキリしない感じが大嫌いだ。
典型的な依存症状。

とっとと家に帰ってねようか。

そう思って歩き始めてから暫く。
既に辺りが真っ暗になった頃、何度か行ったことのある酒場が目に入った。
ブルーの看板。落ち着いた雰囲気の店だ。

・・・飲みたい。
金がないのはわかってる。でも少しだけなら飲んだっていいよな?
今の俺には煙草がないんだから。その代わりに酒をすこし飲む、それだけだ。
煙草がダメなら酒はいいだろ?マーク!

こうしてジョンは何故か心の中でドクター・マークに丁寧に言い訳をしてから店へ入って行った。