大好きな人がこんなに近くに居て。

なのに、こんなイラついた気持ちになるなんて。

大切な、大切な。

とても貴重な時間をムダにしたくない。

「あの。今、人と会っているので、また改めてお話しましょう」

ー・・・そうですか・・・女性の方とお会いしているんですか?ー

「違います」

彼女の顔を見ることができない。

震えている彼女の細い肩を、俺の骨ばった細い指で包み込んだ。

俯いている彼女。

また泣かせてしまっているんじゃないか。

怒りよりも焦りが勝って、今すぐに電話を切りたい。