日向はなぜか浮かない顔をしていて。


「ま、キモチ次第だろ」

と、なるべく明るく言った。


「え?」

日向が顔を上げる。


俺は続けた。


「だから、キモチ次第だって言ってんの。


相手のこと、好きなら、信じられんなら、距離なんて関係ないだろ。

たとえ、飛行機でしか会えない距離でも、な。」


日向に向けて言ったはずなのに。

自分の言葉が自分自身に染みていく。



『相手のこと、好きなら、信じてるなら、距離なんて関係ない』


あまりに自分の言葉がキザで、少し恥ずかしくなる。


でも遠距離ってこうじゃないと耐えられないだろ?



相手がもしかしたら自分じゃない誰かに恋心を抱いているかもしれない。

会えるのなら、顔を見れば気づくことができるかもしれない。


でも、会えないと気づくこともできない。


そして気づかないまま、別れることに…


そんなの、切ないだろ。

勝手な自分の妄想かもしれないのに。


だから、それを防ぐために相手を信じるしかない。



なんだか無性に裕実の声が聞きたくなって。


家に着くと同時に電話をかけた。