「ってか!夢大(ムダイ)も同じクラスとか奇跡じゃない?!」
テンションの高いアキへ曖昧に返事をして
あたしは座席表を確認して席に座った。
あたしの席は毎年恒例、窓側の1番後ろ。
なんていったって名字は湧井。
番号順は1番最後、だもん。
番号順に座れば当然、その席になる。
あたしが座っても前の人は見向きもしない。
前に座るその男の子を気にしながら、
自分の席に荷物を置いたアキと話していると
「おーっす!アキ、日向」
そこへ夢大がやってきた。
夢大…増川 夢大(マスカワ ムダイ)
夢大とアキは恋人同士。
アキと仲のいいあたしは自然とも夢大とも仲が良くなっていた。
「なあなあ。
名前、なんて言うんだよ?」
突然、夢大はあたしの前の席に座る『湯川貴斗』に話しかけた。
あまりに唐突すぎる夢大の行動に驚くあたしと、なぜか爆笑するアキ。
教室は転入生の声を聞こうとシーンと静まった。
振り返ることもなく彼は、素っ気なく答える。
「…………湯川貴斗(ユカワ タカト)」

