「おい、湯川…だったけ?」


そのとき、後ろから声をかけられた。

声を聞いた瞬間、日向の顔がありえないくらいに歪む。




「皆川、だよな」


「なんだ、知ってんのか。」


さっき言っていた皆川榮太。


確かにモテそうな顔してるな。



「人のに手出すつもりか、お前。」


反射的に眉間にシワを寄せてしまう。


「ってかお前、彼女いるんだろ?」


なんかめんどくさいやつだな、コイツ。

俺はスルーを決め込む。


前を向くと日向と目が合って。


アイコンタクト。


さっきよりもペースを上げる。



だんだんと離れて行く皆川。


おっせーな

と、思いながら俺は皆川のほうを向き思い切り叫ぶ。



「おい、ナルシスト!

日向はおめぇーみたいなたらし、興味ねぇってさ。


女のケツ追いかける男ってダセぇーな!」


前を向きなおし、ハイペースなまま日向とともに走る。

だいぶ後ろから



「日向は俺のものなんだからなーっ!!」


と、聞こえた。


だが、言葉は途切れ途切れで。

息切らすにはまだ早くないか?

ってか何勝手に日向を自分のものにしてんだよ。


日向は日向で。

日向は誰のものでもないだろ。