「なんで俺…」


増川はそう言って顔を手のひらで覆った。




「なんで俺…こんなにアキが好きなのにあんなこと言っちゃったんだろ…」


小刻みに震える増川の背中。

いつだって明るいコイツも人並みに、いろんなもん背負ってたんだな。




「お前さ」


俺は増川の背中に声をかける。



「後悔…してんだろ?」


「なんでもう、諦めてんだよ」


「まだ何も始まってなければ、終わってもないだろ」


続けてたたみかける俺に増川は何も反応を示さない。



教室に沈黙が訪れた。



でも、その沈黙を破ったのは



「俺…諦めてないから」


と、いう増川の力強い声だった。