「………増川」
掃除が終わり、荷物を取りに教室に戻ると増川の後ろ姿を見つけた。
教室には他に誰もいなかった。
開いた窓から外で騒ぐ生徒たちの声が入ってくる。
「…おー!貴斗か~
なんか、アレだな。
久しぶりだな」
そう言った増川はものすごく疲れた顔をしていて。
帰るつもりだったが俺は自分の席に座った。
「…お前、今日大変だったみたいだな」
日向とずっと教室の隅で見ていた。
コイツが女子に囲まれている姿を。
「そうなんだよ~
なんか…アキと別れたこと、もう広まってるみたいでさ…
日向かアキから聞いたろ?
別れたこと。」
元気な声と裏腹に沈んでいく増川の表情。
らしくねー。
そういう表情、増川には似合わない。
いつもおちゃらけて笑ってるのがコイツなのに。