『「…あっ」』
会場の声がそろう。
ラスト200メートル。
そこで1位を独走していた彼は転んだ。
全員の視線が彼に集まる。
早く。早く、立ち上がるんだ。
きっと誰もが思っていただろう。
でも、彼はなかなか立ち上がらない。
どうしたんだ?
と、会場がざわめく。
転んだだけなら立ち上がればまだ余裕で1位を狙える。
ただ、起き上がる気配すらなくて。
2位が迫って来る。
『「おー…!」』
そのとき、彼が起き上がる。
誰もが安堵した。
でも、その走り方は不自然で。
2位との距離が縮まっていく。
もしかして…怪我?
転んだ拍子に足首ひねったとか?
うーん…
それにしては不自然過ぎる。
2位の選手との距離わずか、3メートル。
ドキドキと鳴る心臓。
どうなってしまうんだろう。

